このウェブページでは、[イエス・セット(Yes Set)]と[EQ(Emotional Quality:情動指数)]の心理学キーワードの用語解説をしています。
イエス・セット(Yes Set)：ミルトン・エリクソンの催眠療法
EQ(Emotional Quality:情動指数)
イエス・セット(Yes Set)
催眠療法の権威であり、短期療法と家族療法の実践者としても知られるミルトン・エリクソン(Milton. H. Erickson 1901-1980)の催眠技法の一つが『イエス・セット』である。
通常の共感的な会話状態からクライエントを変性意識状態（覚醒水準低下の催眠状態）に導くことを得意としたミルトン・エリクソンは、問題解決のための介入をする前にイエス・セットという肯定感覚を上げる暗示を用いた。
簡単に言えば、イエス・セットというのは、苦痛や抵抗を感じる介入技法に対して『はい、やってみます』という回答を引き出す為の技法であり、『はい』と自然に答えてしまう『心理的な準備段階』を自然な言語コミュニケーションの中で作り出すものである。
例えば、パニック障害の大量発汗や激しい動悸、めまいを生じるパニック発作を克服するための最善の方法は、パニック発作を起こすと考えて不安になってしまう予期不安の事態に何度も曝露することである。
この不安や恐怖に直面させてその刺激に慣れさせる技法は、行動療法のエクスポージャー法やフラッディングと呼ばれるものだが、これを実施する前にイエス・セットを用いると行動療法に速やかに導入しやすくなる。
具体的に、イエス・セットをどう行うのかというと、相手の自尊心を高め、自己肯定感を保証するような言葉をそれとなく相手に対して繰り返したり、相手の弱点や不安を補う形で相手の能力や勇気を賞賛したりするのである。
クライエントの人格や性格、価値観、行動を繰り返し肯定して評価することで、クライエントは無意識的な自己肯定感を高め、自分の行動の選択に自信を持つような言語的暗示を受け容れるようになっている。
EQ(Emotional Quality:情動指数)
EQ(Emotional Quality:情動指数)は、組織を機能的にまとめるリーダーシップを研究したダニエル・ゴールマンが提唱した概念で、『リーダーシップ・社会適応性・成功可能性・社会的有能性の指標となる感情の知能指数』と呼ばれるものである。
ダニエル・ゴールマンは、『ビジョン型』『コーチ型』『関係重視型』『民主型』『ペースセッター型』『強制型』という６つのリーダーシップの類型を考えたが、社会的成功者であり組織のリーダーである人たちは、必ずしもIQが驚異的に高い人たちではなかった。
IQ(Intelligence Quotient,知能指数)は、論理・記憶・計算・図形認識・空間把握・パターン認識といった人間の客観性の高い知性を数量化したものだが、IQの高低は個人の知的能力の潜在的可能性を示すが、IQが高いからといって社会環境における有能性やリーダーシップが高いわけではない。
IQの高低と組織の指導者になれるかなれないか、社会で成功できるかできないかは必ずしも相関しない事に気づいたダニエル・ゴールマンは、社会的有能性と組織の目標達成につながる真の知性としてEQ(Emotional Quality)を考案したのである。
学校の勉強はともかくとして、実際の社会においては『IQで示される純粋な客観的知性』よりも、他者の協力を引き出すような人間的魅力、仲間のモチベーションを引き上げるような共感能力、所属する組織のパフォーマンスを最大化させて目標を達成するリーダーシップなどの総体としての『EQで示される対人スキルと感情的知性』が重要なことが多いという事である。
EQ(Educational Quotient:教育指数)
EQ(Educational Quotient:教育指数)は、IQ(Intelligence Quotient,知能指数)とよく似た概念で、標準学力検査で測定される子供の学力が、その子供の年齢の標準学力と比較してどの位の水準にあるのかを示す指数である。
教育指数（EQ）は、『教育指数＝教育年齢/生活年齢×100』の公式で算定されるが、現在ではIQを用いることのほうが多くなっていて、子供の学力を年齢と結びつけて相対化する教育指数を算定する意義は乏しいとされている。
また、その年齢の標準学力を平均点以外のかたちで客観的に定義することが困難なため、教育指数そのものが誤謬の算定結果であるとする立場もある。
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