『枕草子』の現代語訳:125

清少納言(康保3年頃(966年頃)~万寿2年頃(1025年頃))が平安時代中期に書いた『枕草子(まくらのそうし)』の古文と現代語訳(意訳)を掲載していきます。『枕草子』は中宮定子に仕えていた女房・清少納言が書いたとされる日本最古の女流随筆文学(エッセイ文学)で、清少納言の自然や生活、人間関係、文化様式に対する繊細で鋭い観察眼・発想力が反映された作品になっています。

このウェブページでは、『枕草子』の『雪高う降りて、今もなほ降るに、五位も四位も~』の部分の原文・現代語訳を紹介します。

参考文献
石田穣二『枕草子 上・下巻』(角川ソフィア文庫),『枕草子』(角川ソフィア文庫・ビギナーズクラシック),上坂信男,神作光一など『枕草子 上・中・下巻』(講談社学術文庫)

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[古文・原文]

232段

雪高う降りて、今もなほ降るに、五位も四位も、色うるはしう、若やかなるが、袍(うえのきぬ)の色いと清らにて、革の帯のかたつきたるを、宿直姿(とのゐすがた)にひきはこえて、紫の指貫(さしぬき)も雪にさへ映えて、濃さ勝りたるを着て、袙(あこめ)の紅ならずは、おどろおどろしき山吹を出して、傘(からかさ)をさしたるに、風のいたう吹きて、横さまに雪を吹きかくれば、少し傾けて(かたぶけて)歩みくるに、深き沓(くつ)、半靴(はんか)などのはばきまで、雪のいと白うかかりたるこそ、をかしけれ。

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[現代語訳]

232段

雪が高く積もるほど降って、今もやはり降っているのに、五位も四位も、服装の色が綺麗で若々しいのが、袍(うえのきぬ)の色がとても清らかで、石帯の痕が付いたのを、宿直姿(とのゐすがた)に服を中にかきこんで、紫の指貫も雪にいっそう色が映えて、紫色の濃さが勝っているものを着て、衵(あこめ)の紅でなければ派手な山吹色の衣を外に出して、傘(からかさ)を差しているけれど、風がとても強く吹いて、横殴りに雪を吹き付けてくるので、少し傾けて歩いてくるのだが、深い靴や半靴などの上につけたはばき(飾り物)まで、雪がとても白く降りかかっているのは、とても趣きがある。

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[古文・原文]

233段

細殿(ほそどの)の遣戸(やりど)を、いと疾う(とう)押しあけたれば、御湯殿(おんゆどの)の馬道(めどう)より下りてくる殿上人、萎えたる直衣・指貫(のうし・さしぬき)の、いみじうほころびたれば、色々の衣どもの、こぼれ出でたるを、押し入れなどして、北の陣ざまに歩み行くに、あきたる戸の前を過ぐとて、纓(えい)を引き越して、顔にふたぎて去ぬるも、をかし。

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[現代語訳]

233段

細殿の遣戸(やりど)を、朝早くに押しあけたところ、御湯殿の馬道を通って下りてくる殿上人が、しわになった直衣・指貫がひどく綻びているので、色々な色の下着がこぼれ出てきたのを押し入れるなどして、北の陣の方角に歩いていき、空いている局の遣戸の前を通り過ぎるというので、纓(えい)を前に引き倒して、顔を隠して行ってしまうのも、面白い。

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