『枕草子』の現代語訳:112

清少納言(康保3年頃(966年頃)~万寿2年頃(1025年頃))が平安時代中期に書いた『枕草子(まくらのそうし)』の古文と現代語訳(意訳)を掲載していきます。『枕草子』は中宮定子に仕えていた女房・清少納言が書いたとされる日本最古の女流随筆文学(エッセイ文学)で、清少納言の自然や生活、人間関係、文化様式に対する繊細で鋭い観察眼・発想力が反映された作品になっています。

このウェブページでは、『枕草子』の『物語は住吉。宇津保。殿うつり。国譲りはにくし~』の部分の原文・現代語訳を紹介します。

参考文献
石田穣二『枕草子 上・下巻』(角川ソフィア文庫),『枕草子』(角川ソフィア文庫・ビギナーズクラシック),上坂信男,神作光一など『枕草子 上・中・下巻』(講談社学術文庫)

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[古文・原文]

201段

物語は住吉(すみよし)。宇津保(うつほ)。殿うつり。国譲りはにくし。埋れ木。月待つ女。梅壺(うめつぼ)の大将。道心すすむる。松が枝。こまのの物語は、古蝙蝠(ふるこうもり)さがし出でて、持て行きしが、をかしきなり。ものうらやみの中将、宰相に子うませて形見(かたみ)の衣など乞ひたるぞ、にくき。交野(かたの)の少将。

202段

陀羅尼(だらに)は、暁。経(きょう)は、夕暮れ。

203段

遊びは夜。人の顔見えぬほど。

204段

遊びわざは小弓。碁。さまあしけれど、鞠もをかし。

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[現代語訳]

201段

物語は住吉物語。宇津保物語(うつぼものがたり)。殿うつり。国譲りは憎たらしい。埋れ木。月待つ女。梅壺(うめつぼ)の大将。道心をすすめる。松が枝。こまのの物語は、古い夏扇を探し出して持っていったのが、面白いのである。ものうらやみの中将、これは宰相に子を生ませながら、形見の着物などを欲しがったところが、腹立たしい。交野(かたの)の少将。

202段

陀羅尼(だらに)を読むのは、明け方。経(きょう)を読むのは、夕暮れ。

203段

奏楽の遊びは夜。人の顔の見えないところで遊ぶ。

204段

遊戯は小弓。碁。恰好は悪いけれど、鞠(まり)も面白い。

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[古文・原文]

205段

舞は駿河舞(するがまい)。求子(もとめご)、いとをかし。太平楽、太刀などぞうたてあれど、いとおもしろし。唐土(もろこし)に敵(かたき)どちなどして舞ひけむなど聞くに。鳥の舞。抜頭(ばとう)は髪振り上げたるまみなどは、うとましけれど、楽(がく)もなほいとおもしろし。落蹲(らくそん)は二人して膝踏みて舞ひたる。狛(こま)がた。

206段

弾くものは琵琶。調べは風香調(ふこうじょう)。黄鐘調(おうしきじょう)。蘇合(そごう)の急。鶯(うぐいす)の囀り(さえずり)といふ調べ。

筝(しょう)の琴(こと)、いとめでたし。調べは想夫恋(そうふれん)。

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[現代語訳]

205段

舞は駿河舞(するがまい)。求子(もとめご)、とても風情がある。太平楽は、太刀を抜く場面などは嫌だけれど、とても面白い。唐土(もろこし,中国)で、敵と味方が一緒になって待ったなどという話を聞くと。鳥の舞。抜頭(ばとう)は、髪を振り上げた目つきなどは、疎ましいけれど、音楽のほうはやはりとても面白い。落蹲(らくそん)は、二人で膝を突いて舞ったものである。狛(こま)がた。

206段

弾くものは琵琶(びわ)。琵琶の曲は、風香調(ふこうちょう)。黄鐘調(おうしきちょう)。蘇合(そごう)の急。鶯(うぐいす)の囀り(さえずり)という曲。

筝(しょう)の琴(こと)、とても素晴らしい。その曲は、唐土(中国)の想夫恋(そうふれん)。

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